サマリー
◆ユーロ圏の2021年7-9月期の実質GDP成長率(改定)は前期比+2.2%(年率換算+9.3%)と、2四半期連続で高い成長となった。4-6月期に続く米中の経済成長率を上回る強い結果であり、ワクチン接種の進展による新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染拡大抑制により、経済の正常化が本格的に進んだ。主要国では、フランスが個人消費を中心に高い成長となり、コロナ禍前の水準を僅かに下回る水準まで回復した一方、これまでフロントランナーだったドイツは前期に続いて2%成長に届かなかった。
◆コロナ感染の影響も受けた供給サイドのボトルネックが長期化し、生産活動は停滞、価格は上昇している。加えて、エネルギー価格の高騰が、企業や家計の景況感・行動に影響を及ぼしており、短期的には、年末にかけて景気減速とインフレ率上昇が共存する状況に陥るとみられる。ECBが想定するように、インフレ圧力の上昇は一時的か見極める必要があるが、総じて“一時的”状態が長期化かつ深刻化しているのが現実である。一方、大陸欧州よりも高いインフレ率に直面する英国では、BOEが、雇用環境を見極めた上で今後数ヵ月以内の利上げを示唆し、出口戦略(金融政策の転換)の点ではECBよりも一歩も二歩も進んでいる。
◆10月半ば以降、欧州ではコロナの新規感染者が再び増加に転じており、増加ペースが加速している国を中心に、行動制限の再強化の動きが見られる。今後、行動制限措置の適用範囲や内容が拡大していけば、景気への影響が懸念される。各国政府や金融当局は、悩ましい状況に直面することになるだろう。
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