サマリー
◆米国のSPAC市場は有望な非公開企業が迅速かつ簡単に上場する方法として2020年に爆発的な人気を集め、2021年第1四半期もその勢いが続いた。しかし2021年4月に入り上場件数は10社ほどと、2020年6月以来のスローペースとなり、ブームの失速感が強い。
◆ブーム失速の要因は、2021年4月にウォール街に対する規制強化派とみられる元米商品先物取引委員会(CFTC)委員長のゲンスラー氏が米証券取引委員会(SEC)委員長に就任した影響も大きい。ゲンスラー氏による新体制では、SPACの規制強化が最優先課題になると受け止められており、株主に付与されるワラントは特定状況下で資本ではなく負債として処理すべきと会計基準の見直しを示唆している。またゲンスラー氏はSPACが公表した業績見通しに虚偽があった場合、摘発対象になることも強調している。
◆英国金融行為監督機構(FCA)は4月30日に上場規則におけるSPAC規定に関する改正案のコンサルテーション文書を発表した。4週間にわたるこのコンサルテーションは、3月に発表されたヒル上院議員による上場規則の見直しやその提言を受けたものである。コンサルテーション期間が最短に設定されているため、コンサルテーション終了後、改正案は間もなく発効する見通しともいわれている。FCAの改正案の主眼は、米国上場のSPACに適用される保護措置の多くを英国の法体系に組み入れることである。
◆英国政府はブレグジット後も、国際金融都市としてシティが地盤沈下しないように金融規制の刷新に意欲を燃やしている。今回の改正案に対し、EU規制とは異なる独自の金融規制策定が可能になった成果ととらえる向きもあった。しかし実際にはブレグジット前でも導入可能な内容であり、SPAC人気への焦りの反応との見方が正解であろう。一方、日本でも勢いに乗り遅れるべきではないとの声が上がっている。日本のスタートアップ企業が米国上場する最速の道になるとの見方に加え、有望企業が日本を素通りし海外上場してしまうとの危惧が高まっていることは確かである。ただし米国のSPAC市場は鈍化しつつあり、(英国と同様に)時機を逸した感は否めない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
4-6月期ユーロ圏GDP 原油高でも底堅く成長
実質GDP成長率は前期比+0.4%と市場予想から上振れ
2026年07月31日
-
欧州経済見通し 中東情勢に一喜一憂
ECBの追加利上げの可能性が高まる/英国ではバーナム政権が始動
2026年07月28日
-
欧州における防衛費増加の進捗と展望
~競争力強化との両立に向けた課題~『大和総研調査季報』2026年夏季号(Vol.63)掲載
2026年07月27日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

