サマリー
◆英国では、新型コロナウイルス感染再拡大が急速に進み、入院患者は3月のロックダウン開始時よりも多くなるなど、先行きに不透明感が漂っている。ジョンソン首相は10月12日に英国議会にて、新型コロナウイルス感染拡大抑制に向け、地域の感染率に応じ3段階の警戒制度を導入すると発表した。政府の科学顧問をはじめ多くの専門家から、2週間程度の全国的なロックダウン(都市封鎖)により感染拡大の勢いを抑える、いわゆるサーキットブレーカーを発動すべきとの声もあがっている。
◆また大陸欧州でも深刻な感染拡大が続いており、フランスでは10月14日の感染者数は4月の第一波のピーク時の3倍に相当している。マクロン大統領は同14日にパリやリヨン、マルセイユ、トゥールーズなど9都市において午後9時から午前6時までの夜間外出禁止令を発布した(10月17日午前0時より4週間施行、感染拡大が続けば12月1日まで継続される)。
◆コロナ危機にさらされる中でも、英国とEUは将来的な関係性を巡る協定交渉の妥結に向け奔走している。9月にジョンソン首相は10月15日までに協定交渉が妥結されなければ、交渉打ち切りと一方的に期限を切っていた。EUの譲歩を引き出す交渉戦術とみられているが、意図した効果は得られなかったため、同15日~16日のEUサミット終了後に結論を出すと方針を転換している。サミット後に発表される声明で、交渉開始時点から争点となっていた漁業権と国家補助ルールについてどのような進展があるのかについて示唆があるのかが焦点となる。
◆現状では10月16日のEUサミット終了後も協議は続けられ、現実的には11月中旬のEU臨時サミットで合意するという可能性も指摘されている。ただ、移行期間終了までに協定妥結に至らなければ(合意なき離脱となれば)、WTOルールに基づく貿易に移行しながらも、2021年以降も協定交渉を続ける可能性が高い。あるいは、ゼロ関税、数量割当なし、といった最低限(ベーシック)な通商協定だけをとりいそぎ締結し、その他の将来的な関係性の様々な要素については一時的な協定を結び、2021年以降、恒久的な解決策に向けて協議が続けられることもありうる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 追加関税の影響が顕在化
米国向け輸出が急減、対米通商交渉の行方は依然不透明
2025年06月24日
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
-
「九州・沖縄」「北海道」など5地域で悪化~円高などの影響で消費の勢いが弱まる
2025年7月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年07月14日
-
2025年5月機械受注
民需(船電除く)は小幅に減少したが、コンセンサスに近い結果
2025年07月14日
-
不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース(TISFD)の構想と日本企業への示唆
影響、依存、リスクと機会(IDROs)をいかに捉え、対処するか
2025年07月14日
-
トランプ減税2.0、“OBBBA”が成立
財政リスクの高まりによる、金融環境・景気への悪影響に要注意
2025年07月11日
-
中央値で見ても、やはり若者が貧しくなってはいない
~20代男女の実質可処分所得の推移・中央値版
2025年07月14日
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日