感染再拡大と合意なき離脱で揺れる欧州

パリは夜間外出禁止令を発布、英国はサーキットブレーカーを検討

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2020年10月16日

サマリー

◆英国では、新型コロナウイルス感染再拡大が急速に進み、入院患者は3月のロックダウン開始時よりも多くなるなど、先行きに不透明感が漂っている。ジョンソン首相は10月12日に英国議会にて、新型コロナウイルス感染拡大抑制に向け、地域の感染率に応じ3段階の警戒制度を導入すると発表した。政府の科学顧問をはじめ多くの専門家から、2週間程度の全国的なロックダウン(都市封鎖)により感染拡大の勢いを抑える、いわゆるサーキットブレーカーを発動すべきとの声もあがっている。

◆また大陸欧州でも深刻な感染拡大が続いており、フランスでは10月14日の感染者数は4月の第一波のピーク時の3倍に相当している。マクロン大統領は同14日にパリやリヨン、マルセイユ、トゥールーズなど9都市において午後9時から午前6時までの夜間外出禁止令を発布した(10月17日午前0時より4週間施行、感染拡大が続けば12月1日まで継続される)。

◆コロナ危機にさらされる中でも、英国とEUは将来的な関係性を巡る協定交渉の妥結に向け奔走している。9月にジョンソン首相は10月15日までに協定交渉が妥結されなければ、交渉打ち切りと一方的に期限を切っていた。EUの譲歩を引き出す交渉戦術とみられているが、意図した効果は得られなかったため、同15日~16日のEUサミット終了後に結論を出すと方針を転換している。サミット後に発表される声明で、交渉開始時点から争点となっていた漁業権と国家補助ルールについてどのような進展があるのかについて示唆があるのかが焦点となる。

◆現状では10月16日のEUサミット終了後も協議は続けられ、現実的には11月中旬のEU臨時サミットで合意するという可能性も指摘されている。ただ、移行期間終了までに協定妥結に至らなければ(合意なき離脱となれば)、WTOルールに基づく貿易に移行しながらも、2021年以降も協定交渉を続ける可能性が高い。あるいは、ゼロ関税、数量割当なし、といった最低限(ベーシック)な通商協定だけをとりいそぎ締結し、その他の将来的な関係性の様々な要素については一時的な協定を結び、2021年以降、恒久的な解決策に向けて協議が続けられることもありうる。

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