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欧銀はコロナ禍を乗り切れるか

ポストコロナではチャレンジャーバンクにも試練が到来?

2020年08月26日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

サマリー

◆コロナ禍の混乱にもかかわらず、欧銀は2020年前半を大きな影響がなく切り抜けたと言っても過言ではない。これまでの金融危機とは違い、ダメージを受けるどころか、危機を通じて大きく収益を上げた欧銀も少なくない。大規模な投資銀行部門やトレーディング部門をもつ銀行は、歴史的な変動を見せた金融市場における顧客のポートフォリオの再編に伴いトレーディング収益の急増や、緊急の資金調達に迫られた政府や企業による債券発行による手数料収入で大きな収益を上げている。

◆ただし欧銀の本当の正念場は2020年後半からと言われている。各国政府のコロナ禍対策により、民間企業の債務不履行は抑制されたものの、今後の失業率の急増と企業破綻の増加による信用損失に備え、欧米の銀行は数百億ドルに近い引当金を積んでいる。V字型の経済回復が期待できないと判断した各行は、2020年後半にもさらなる引当金の積み増しとなるのが実情であろう。欧銀は政府および中銀主導の支援スキームにより、銀行の大半は顧客の債務不履行が実際に増えるのを一時的に回避しているにすぎないことを十分認識している。

◆またコロナ禍で厳しい環境に置かれているのはチャレンジャーバンクも同様である。欧州の大手チャレンジャーバンクの収益は、顧客がカードを利用した際に生じるインターチェンジ料金が大部分を占めている。このため、ロックダウン中の移動制限により、口座保有者の購入活動が抑制され、カード使用が急減し、収益は打撃を受けている。

◆前回の危機で憎まれ役になった銀行は、巨額な政府支援の提供があった上に、名誉挽回のチャンスとみて、コロナ禍の打撃を受けた企業に温情的な対応をしてきた。しかし、貸付はいずれ回収しなければならず、銀行は事業継続が不可能という非情な判断を下さなければならない状況も避けられない。さらに、2020年後半以降の収益拡大の見通しが暗いため、欧銀は利益確保のためコロナ禍勃発後に一時的に凍結した人員削減やコスト削減といったリストラ策を再開している。2020年上半期の活発なトレーディング収益による好業績は一時的なものであり、最悪の事態はこれからという見方が大半を占めている。

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