サマリー
◆欧州最大のフィンテック企業、ドイツのワイヤーカードのマークス・ブラウン前CEOが、6月23日に不正会計および株価操作の疑いで逮捕された。同社の債務は約35億ユーロに上り、6月25日に権威あるDAX30構成銘柄としては32年ぶりの破産申請に追い込まれる異例の事態となり、15銀行のコンソーシアムを含む債権者は多額の損失を予想している。
◆この“欧州版エンロン事件”ともいうべき不祥事は、ブレグジット後に英国金融街から規制対象事業の管轄権を増やしていこうと欧州が動いている矢先に起きている。ドイツが新たな金融ハブとしてロンドンに代わりホールセールバンキング活動の活性化を目指す時に、国内の規制当局に適切な監督能力がないことを、欧州大陸の金融機関やその顧客に対して証明してしまった。
◆近年は、ドイツのN26や英国のモンゾなど大手チャレンジャーバンクの名前も顧客の中心として上がっていた 。今回のワイヤーカードの1件で、そもそも、ベンチャー企業であるチャレンジャーバンクから、そこまで収益を上げていたかなどの疑問も残る。欧州のチャレンジジャーバンクの多くは急激に口座数を獲得しているが、コストも比例して増大し、損失が拡大しているのが現状である。
◆コロナ危機以前の2020年初まで、チャレンジャーバンクは欧州フィンテック業界の時代の寵児ともてはやされた。ただコロナ危機によるロックダウンが起き、カード決済や旅行などチャレンジャーバンクの主要収益源となるインターチェンジフィーが発生する機会が減少し、状況は一変した。そもそも既存の大手行は、金融サービスのデジタル化に取り残されないことを目的としたフィンテック企業との提携熱が過去数年高まっていた。ただ殆どの場合、提携といっても単なるAPIのベンダー契約に過ぎなかったため、収益面や顧客獲得で大した成果も生まれず、シナジー効果も殆ど得られなかったのが実情であろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
4-6月期ユーロ圏GDP 原油高でも底堅く成長
実質GDP成長率は前期比+0.4%と市場予想から上振れ
2026年07月31日
-
欧州経済見通し 中東情勢に一喜一憂
ECBの追加利上げの可能性が高まる/英国ではバーナム政権が始動
2026年07月28日
-
欧州における防衛費増加の進捗と展望
~競争力強化との両立に向けた課題~『大和総研調査季報』2026年夏季号(Vol.63)掲載
2026年07月27日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

