サマリー
◆新型コロナウイルスの感染拡大の中心地は、既に中国から欧州に移っている。中国に次ぐ影響が確認されたイタリアでは、3月8日に感染拡大抑止に向け、ミラノを州都とするロンバルディア州などの北部一帯を隔離対象として封鎖する法令を発令、翌9日にはその対象を国内全域に拡大した。また3月1週目から急速に感染者数が拡大しているスペインやフランス、ドイツも、それぞれイタリア同様に休校措置をとり、食料品店などの必要最低限の商店以外の営業が禁止となった。
◆トランプ大統領は、シェンゲン協定に参加していない英国でも感染者が急増しているため、(欧州26カ国に加えて)3月16日から英国およびアイルランドを渡航禁止の対象としている。確かに英国では、急激に感染者数が増加し、欧州での感染拡大のペースを後追いしていることが分かる。感染者数が100人を超えてから、同じ日数だけ経過した時点での累積感染者数を指数化してみると、9日目の段階で英国は日本の約3.4倍、シンガポールの約5.3倍のペースで感染者数が増加している。
◆イタリアはユーロ圏経済の弱点であり、新型コロナウイルスによる移動制限が課される前でも、この10年間で4回目の景気後退に直面しつつあった。ECBが3月の定期政策会合で、自己資本比率規制の緩和を決定したものの、イタリアの銀行のいくつかは、既に実質上の債務超過状態にある。そのため、今問題になっているのはイタリア経済のマイナス成長の度合いではなく、イタリアの銀行危機が各国に伝播するかどうかという点である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日