サマリー
◆英国中央銀行(BOE)は3月11日、新型コロナウイルスの感染拡大による経済的なショックを和らげる広範なパッケージの一環として、0.5%ptの緊急利下げに踏み切り、政策金利を0.25%とした。BOEは、他の主要中銀と比較して、政策余地が残された数少ない中央銀行であった。ただし、(マイナス金利の効果に懐疑的なBOEにとって)今回の利下げによって残された0.25%からの引下げとなると、今後は慎重な判断をせざるを得なくなるだろう。
◆3月11日午後にスナーク財務相から発表された2020年の財政予算では、昨年12月の総選挙公約で掲げたように、緊縮財政に明確な終止符を打つ、30年ぶりの大規模な財政出動が示された。英国政府とBOEが協調して新型コロナウイルスによる経済の打撃に対処する姿勢を示したことは、(財政出動を躊躇する)各国政府への強いメッセージにもなる。
◆欧州中央銀行(ECB)ではラガルド総裁が、3月12日の定例理事会で、ユーロ圏を景気後退の危機に立たせている新型コロナウイルスへの対応を決めるという。特にユーロ圏ではマイナス金利の深掘りが進んだ状態からの信用リスクの上昇という難局に直面している。新型コロナウイルスの感染拡大が続けば、金融システムに内在する脆弱性が露呈し、新たな債務危機(短期的にはクレジット市場)を引き起こす可能性がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 成長再加速の兆し
景気の下振れリスク緩和でECBの追加利下げ観測は後退
2025年11月25日
-
7-9月期ユーロ圏GDP 緩やかな成長が継続
フランスの成長ペースが加速し、市場予想からはわずかに上振れ
2025年10月31日
-
欧州経済見通し フランスの政治不安は一服
ただし予断は許されず、予算協議が次の焦点
2025年10月21日

