欧州経済見通し 一段と悪化した景況感

出口の見えないBrexitの行方が重石に

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2019年01月24日

  • 山崎 加津子

サマリー

◆欧州では2018年末に景況感が一段と悪化した。ユーロ圏の企業景況感は米中の貿易摩擦の激化、新興国の景気減速を背景に2018年年初をピークに悪化傾向にあるが、年末には消費者信頼感も明確に悪化した。英国のEU離脱期限が迫る中で離脱の道筋がますます混沌としていることも景況感を悪化させたと考えられる。家計所得拡大と原油価格下落という消費の下支え要因はあるものの、ユーロ圏の成長率は2017年の+2.4%から減速傾向をたどると予想される。2018年の+1.8%(推計値)のあと、2019年と2020年は共に+1.4%成長を予想するが、景気下振れリスクが高まっていると考えられる。インフレ圧力は限定的で、消費者物価上昇率は2019年+1.5%、2020年+1.6%にとどまると予想される。ECBは2019年秋以降に政策金利の引き上げをもくろむが、企業と消費者の景況感が好転しない限り、利上げは2020年以降に持ち越しとなろう。

◆英国の企業と消費者の景況感は、2016年6月の国民投票でEU離脱が決まった直後には急速に悪化したが、その後は持ち直し、離脱交渉の渦中にあることが特段の悪影響を及ぼさないかにみえた。しかし、「合意なしの離脱」の可能性が高まった2018年末に景況感は明確に悪化し、英国景気の減速を示唆している。メイ首相がEUと合意した「離脱協定案」を英下院が2019年1月15日に大差で否決したことで、EU離脱の行方はますます混沌としてしまった。メイ首相、英国議会、そしてEUはいずれも「合意なしの離脱」を回避したいと考えており、3月29日の離脱期限が延長される可能性が高まっているが、時間切れとなるリスクも残る。

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