サマリー
◆ユーロ圏の4-6月期の成長率は1-3月期と同じ前期比+0.4%となった。需要項目別の内訳は未発表だが、牽引役はもっぱら内需と推測される。なお、年初から悪化傾向にあった製造業景況感は7月に下げ一服となったものの、「貿易戦争」の影響が本格的に顕在化するのはこれからとみられる。加えて、一部の新興国の通貨安が進行しており、外需の見通しは引き続き不透明である。一方、内需は雇用改善と低金利が追い風となり、2018年後半も堅調を維持すると見込む。なお、今秋注目されるのが各国の2019年予算案で、ドイツやオランダなど財政健全国が歳出拡大余地の活用に動けば、景気の上振れ要因となり得る。一方、イタリア新政権がばらまき的な予算案を無理押しすることになれば、イタリア国債利回りが一段と上昇して景気にとって逆効果となりかねない。
◆英国の4-6月期の成長率は個人消費の加速で前期比+0.4%と1-3月期の同+0.2%から加速した。小売売上高は7月も好調を維持しており、一見するとEU離脱(Brexit)という不透明要因が英国経済に悪影響を及ぼしていないかのようである。ただし、5月から7月は好天候に加え、ロイヤル・ウェディングやサッカーのワールドカップなどのイベントが消費を押し上げており、むしろ一時的な持ち直しと考えられる。英国とEUの離脱交渉はこの秋に最大の山場を迎える。「EUとの合意なしの離脱」よりも、離脱協定に則って2019年3月末から2020年末までを「移行期間」とする可能性が高いと予想するが、不透明感は容易には晴れないであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日