サマリー
◆4-6月期のGDP統計が発表され、予想通りユーロ圏経済の堅調と、英国経済の低成長が確認された。ユーロ圏は前期比+0.6%成長となり、足下の景気回復局面の平均成長率である同+0.4%を3四半期連続で上回った。一方、英国は同+0.3%にとどまり、平均成長率である同+0.6%を2四半期連続で下回った。
◆ユーロ圏の消費者と企業の景況感は7月にやや頭打ち感が出たものの、高水準を維持しており、年後半も内需が牽引役となった景気拡大が継続すると見込まれる。ユーロ圏の成長率は2017年+2.1%、2018年はやや減速して+1.8%になると予想する。景気好調を背景にECBがいつ金融緩和の修正に動くか注目されているが、7月の消費者物価上昇率は原油価格の安定とユーロ高効果により前年比+1.3%と低水準にある。ECBはこの秋に緩和政策の修正を議論すると表明しているが、資産買取額の縮小は2018年前半、マイナス金利の修正は2018年後半以降と、慎重に時間をかけて実行されよう。
◆一方、英国の消費者信頼感はじわじわ悪化している。中でも景気見通しが悪化しており、Brexitを巡る先行き不透明感が影を落としているとみられる。英国の成長率は、2017年は+1.5%、2018年は+1.3%と減速を見込む。なお、Brexitに関しては、夏休み明けが意識され始めた8月半ばから英国政府の動きが活発化している。保守党内の意見対立の収拾を図り、Brexit後の移行期間の設置を正式にEUに要請し、また国境管理や通関手続きに関する提案を行うなど、従来に比べればはるかに建設的な対応である。ただし、EU側は通商協定の協議の前提に離脱協定の合意を掲げており、10月までの当面の交渉では離脱協定の3条件に関してどこまで歩み寄れるかが最大の焦点となろう。
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