サマリー
◆ユーロ圏の債務危機が始まった後、ユーロ参加国の国債金利は、ソブリンリスクを反映するようになった。その結果、国債金利は、銀行への資本注入等によって増加した政府の債務残高の対GDP比と連動して、ユーロ参加国政府の債務返済負担に大きな影響を与えるようになった。
◆ユーロが導入された後、債務危機が始まるまでの間には、政府の債務残高の対GDP比の大きい国に資金が流入したことがあった。しかし、これはユーロ圏内の為替リスクがなくなった後の一回性の現象と考えられ、同様のことが再度起こる可能性は低い。
◆以上のことから、ユーロ参加国の政府は、ユーロ参加国のユーロ建て国債の間に高い代替性がある中で、国際金融市場により、緊縮政策に成功すれば国債金利が下がり、緊縮政策を怠れば国債金利が上がるという動機づけを与えられつつ、長期間緊縮的財政政策を続ける可能性が高い。
◆緊縮政策により高まった失業率は、緊縮政策に反対する政治的な運動の背景の一つとなっているが、今後同程度の緊縮政策を継続することですむのであれば、労働市場の需給調整機能が働いて、少しずつでも通常の水準に戻っていく可能性が高い。
◆緊縮政策が始まった後ユーロ圏の経常収支黒字が拡大したが、これはユーロ圏における貯蓄と投資のバランスが貯蓄増・投資減の方向に変化した結果と考えられる。したがって、ユーロ圏における緊縮政策の長期化に伴って、経常収支の黒字傾向も長期化する可能性が高い。
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