サマリー
◆長年にわたり、国外からの関心を殆ど集めなかったオランダの議会選挙がここまで注目されているのは、まぎれもなく反EU、移民排斥のラディカルな政策を掲げる極右政党である自由党の支持率の高さからであろう。第1党に躍り出ることも予想されている同党のウィルダース党首は、オランダのドナルド・トランプともいわれ、メディア不信やツイッター偏重など共通点も多い。
◆2016年8月に発表された自由党のマニフェストは11項目からなるわずか1枚であり、刺激的なスローガンの寄せ集めにすぎず、実際の政策運営がどのようになるかは見えてこない。ウィルダース党首はマニフェスト発表にあたり「数百万のオランダ国民は祖国がイスラム化されていくのに嫌気がさした。大量の移民・難民の流入、多発するテロや暴力、不安はもうたくさんだ」と政治的公正さを欠く発言をツイートし、物議を醸した。
◆米国の利上げ局面ではエマージング市場からの資金流出なども懸念され、ドルのヘッジコストの上昇が重荷となることは否めない。そのため足元では、公的年金やソブリン・ウェルス・ファンドなどは、ドルヘッジを控える(先物・通貨スワップ市場でドル売りを控える)ことでドルの放出を抑制しつつある。そのような中、ポピュリズム政党の躍進による政治リスクの高まりでドル回帰の流れが重なるなど、ドルの供給不足に拍車が掛かりつつある。
◆今回の選挙で、ブレグジット以降、さらなるドル調達の中心市場を目指す英国金融街シティへの影響など思いがけない効果も期待される。ドル調達難に直面する金融機関が増える一方、今までシティでのドル調達市場に参加していなかった第三国の地方銀行などのプレーヤーの増加も見込まれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日