ドイツの銀行危機報道で再燃した欧銀不安

複雑すぎる金融規制が信用不安の閾値を下げる

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2016年10月12日

サマリー

◆ドイツ銀行の経営危機報道を発端に欧州銀行セクターの行方が改めて注目されている。ドイツGDPの半分に匹敵する資産を持つ同行の経営不安が欧銀セクターの不安再燃に直結し、様々な報道が流れるたびに、ドイツ政府や銀行幹部が火消しに追われるなど混乱した状況が9月半ばより続いている。9月には他の欧銀もリストラ策を発表しており、再建に向け具体的なメッセージを示したにもかかわらず、市場は欧銀への懐疑的な見方を継続させている。


◆ドイツでは、地域金融機関である公的貯蓄銀行や州立銀行(ランデスバンク)、協同組合などが乱立し、大手5大銀行の市場シェアは3割程度に過ぎない。大手銀行は、ドイツ企業の海外進出パートナーとして国外で市場を拡大せざるを得なかった経緯があり、1980年代からシティを拠点として海外事業の比重を高めていった。米系銀行からスタートレーダーやアナリスト、デリバティブ担当者を引き抜くことで急成長を遂げたものの、金融危機以降は新しいビジネスモデルを構築できずに苦しんでいたといっても過言ではない。


◆金融機関救済に公的資金を二度と使わないように、金融規制の厳格化も含め、様々な銀行改革が行われてきた。しかし、金融規制における資本要件の複雑さは無用な信用不安を煽る可能性が高いことも確かだ。規制強化されたがゆえに明らかな流動性不足や資本不足に陥る前に、パニックが起きる可能性がある。複雑すぎる金融規制が信用不安の閾値を引き下げているだけでなく、公的資金を使えないことにより、民間救済策の一環として銀行同士の持ち合いが再度強まる可能性も高い。

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