サマリー
◆欧州の政策担当者の間では、にわかにベーシックインカム制度の導入が議論され始めている。ベーシックインカム制度とは、最低限の所得保障として政府が定期的に一定額の現金を国民に対して支給する制度であり、給付基準の判断が難しく不公平になりがちな生活保護給付など、複雑な社会保障を整理する効果などが期待されている。かねて、ベーシックインカム制度は国民均一に現金を配るという性質上、現実的なヘリコプターマネー政策の実施手段として注目されていた。
◆スイスでは、ベーシックインカム(Universal Basic Income)の導入の是非を問う国民投票が6月5日に実施された。この国民投票は、一部のラディカルなエコノミストが主張する理論にすぎないといわれていたヘリコプターマネーが、現実のものになるか否か、金融関係者からも注目された。投票実施前の5月4日にはチューリッヒでベーシックインカムに関する国際会議が開催され、バルファキス元ギリシャ財務相やMITのエコノミストなど世界的に著名な学識関係者が参加している。
◆ベーシックインカム制度は、一律支給される現金を求め周辺国から移民の大量流入を招くことが懸念されている。移民問題を抱えたままでのヘリコプターマネー政策の実施は、たとえ国民の就労意欲が高くとも、社会保障費の拡大という問題だけでなく、実質賃金の低下圧力に直面する可能性も指摘されている。この問題が表面化したのは、近年の英国である。英国のEU離脱(Brexit)が選ばれた最も大きな要因として、経済移民の大量流入の問題に伴う英国白人労働者階級の賃金低下が挙げられている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利上げ後、状況が一変
原油価格下落で追加利上げは様子見/スターマー首相辞任後の注目点
2026年06月23日
-
欧州経済見通し 家計主導の景況感悪化
製造業では駆け込み需要が下支え/英国では政治不安がリスクに
2026年05月27日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 市場予想に反して減速
かろうじてプラス成長も、原油高の悪影響本格化の前から成長停滞
2026年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

