サマリー
◆ユーロ圏の1-3月期のGDP成長率は前期比+0.6%で4四半期ぶりの高い伸びとなった。個人消費、政府消費、固定資本形成という内需項目がそろってプラス成長に貢献した。他方で、純輸出は3四半期連続で前期比寄与度がマイナスとなっている。一過性の要因が消える4-6月期以降はやや減速するものの、雇用改善を追い風とする個人消費が引き続き牽引役となって2016年は+1.5%成長を見込む。原油価格が1月半ばに底打ちして、安値のほぼ2倍の水準まで上昇してきたことで、ユーロ圏の消費者物価上昇率は5月の前年比-0.1%から年後半は上昇に転じると予想される。とはいえ、賃金上昇率は伸び悩んでおり、消費者物価上昇率もごく低い伸びにとどまると予想される。
◆英国の1-3月期のGDP成長率は前期比+0.4%となり、2015年10-12月期の同+0.6%から減速したが、個人消費と固定資本形成の寄与度はどちらも1-3月期が10-12月期を上回った。EU離脱の是非を問う国民投票の行方に対する不透明感が晴れない中で、企業景況感の悪化や投資の落ち込みが見られるが、BREXIT懸念は個人消費には目立った悪影響を及ぼしておらず、5月の小売売上高は前年比+6.0%へ加速した。5月の消費者物価上昇率は同+0.3%と低水準にとどまったが、年後半は原油価格の上昇になどを受けて、緩やかながら加速すると予想される。
◆6月23日の国民投票の行方を決するのは投票率の高低となろう。投票率が低い場合はEU離脱が、投票率が上がった場合はEU残留が決まると予想される。離脱派ほど投票意欲が強くないと考えられる残留派が、6月半ばの株価急落、ポンド安、さらにEU残留を訴えていた労働党議員の殺害事件で危機意識を高めたとみられ、EU残留の可能性が高まったと考えられる。ただ、残留が決まった場合でも、英国ではEU残留派とEU離脱派に明確に分裂した与党保守党の立て直しという課題が残されることになろう。また、他のEU加盟国の政治リスクを高め得ることにも注意が必要であろう。相次いだ金融危機、債務危機を経て、各国でEUに懐疑的、批判的、あるいは否定的な人々が増加傾向にある。英国の国民投票の結果如何にかかわらず、EU内で反EUと親EUの対立が政治不安を招くと懸念されるイベントが繰り返される可能性はかなり高い。
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