サマリー
◆英国ではEU残留の是非を問う国民投票を今週に控え、残留・離脱派ともに最後の選挙キャンペーンに追われている。当初は残留支持が優位であった世論調査も、6月に入り離脱支持リードが拡大していた。そのような中6月16日、現職の残留派ジョー・コックス下院議員が極右組織とのつながりが報道された男に殺害された。離脱派の移民抑制の動きが、極端なナショナリズムを展開する米国のトランプ大統領候補や、フランスの国民戦線のルペン党首とは同列ではないことが浸透しつつある最中の出来事であったため、一時的に離脱派の勢いが減速したといっても過言ではない。
◆キャメロン首相は、離脱が決定すれば、速やかにEU離脱の手続き(EUへの通知)を開始するとしている。そのため最短で国民投票の翌24日の告知も想定されるが、現実的には6月28日、29日のEU首脳会議で英国がEU離脱の意思を正式に告知し、リスボン条約50条を正式に行使する可能性が高い。一方、6月15日には、離脱派の公式キャンペーン(Vote Leave)は離脱が選ばれた後の計画(ロードマップ)を発表している。ロードマップ上では、離脱が国民投票で選択されたとしても直ぐにリスボン条約50条を行使しないことが明記されている。
◆6月23日の投票は夜10時で締め切られ、その後即開票される。開票の最終結果はロンドン時間の朝4時(日本時間の24日正午)ごろには判明することが予想されている。当日まで投票態度を決めかねている層が多いため、投票結果は最後まで流動的であることが予想される。ただし、それ以上に今回の国民投票は、離脱・残留どちらが選択されても英国内に不満や政治的な不安定さが残ることが予想される。特に地方と大都市などの居住地や、若者と高齢者など世代間の意見の相違は大きく、大差で結果が出ない限り、当面火種がくすぶることには違いない。
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