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マイナス金利と欧銀不安の連鎖

欧州のポートフォリオは貯蓄から投資へシフトしたのか?

2016年02月16日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

サマリー

◆日銀が導入したマイナス金利は、事前の予想を覆すイベントであり、その政策効果を見極めるためには当面の時間が必要となる。ただし、マイナス金利を実施してからすでに1年以上が経過する欧州でも、必ずしも中銀の思惑通りの政策効果が現れている訳ではない。欧州では銀行セクターの減益や赤字決算を契機に、マイナス金利が銀行収益を著しく悪化させたという懸念が再び取り沙汰されている。


スイスの銀行セクターはもともと住宅ローン貸出の占める割合が大きく、マイナス金利は住宅価格をさらに押し上げた要因になったといわれている。デンマークやスウェーデンも住宅ローン貸出が急増しており、特にスウェーデンは深刻な住宅バブルに見舞われ、家計部門の債務残高は過去最大を記録している。


2016年2月に入り、原油価格の再下落や世界経済が景気後退に向かうかもしれないという不安に加えて、偶発的転換社債(CoCos)に対する信用不安から欧州銀行を震源とした株式市場の動揺が全世界中に拡大した。欧州では、バーゼルⅢ実施を契機に2014年から2015年にかけて、その他Tier1向けのCoCos(AT1債)の発行が急増している。発行急増の背景のひとつには、英国やドイツ、スイスの大手行がバーゼルⅢのレバレッジ比率規制の強化に伴うTier1資本不足の対応を急いだことが挙げられる。


金融危機以降、欧銀は収益性を強化させるために、投資銀行部門のリストラを強化していたが、高額年収のスタッフを多く抱えている点に変わりはなく、想定していた収益を上げられていなかったのが実情である。マイナス金利下での欧銀は不採算部門から撤退した後に続く収益性の高いビジネスモデルを未だ見つけられてはいない。どの銀行もウェルスマネジメントビジネスの拡大を狙っているが、米銀ほどの成功モデルを確立できていないのが実情であろう。

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