バーゼル規制でも足並みを乱す欧州

難民問題だけでない統合深化の障壁

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2015年11月27日

サマリー

◆11月10日、キャメロン首相が、英国のEUとの関係の未来像についてチャタムハウスで演説した内容が波紋を呼んでいる。この演説の中で、2017年末までに実施予定のEU残留・離脱を問う国民投票に先立ち、EUに求める4つの改革を明らかにした。投票前に英国にとって有利な改革を引き出し、残留支持を強めるのが首相の意図とされる。


◆金融街シティを抱える英国では、銀行規制の強弱がそのまま金融ハブとしての国際的な競争力を左右する。ニューヨークや香港、シンガポールといった米国やアジアの金融街と熾烈な競争下にあり、EUによる画一的な決定に金融規制強化の方向性が異なるとの不満が絶えない。


◆英国規制当局は、リーマン・ショックを受けて強化された一連のバーゼル規制に加え、独自の規制方針を打ち出してきた。代表的な例を挙げれば、2015年7月に英国健全性規制機構(PRA)が発表した英国の主要行に対するレバレッジ比率規制案がある。英国内預金高500億ポンド超の銀行は、バーゼル規制適用予定(2018年)を前倒し、2016年よりレバレッジ比率3%の達成を求められる。


◆金融界では役職員への報酬が競争力に直結するといっても過言ではない。英国は、EUが提案していた銀行員(バンカー)に対する賞与報酬規制(ボーナスキャップ)に関しては当初から難色を示していた。シティでは、EUに留まる限り中央集権的な金融規制の強化が続くのではと懸念する声が相次ぐ。特に最近の金融規制改革は、市場参加者を引き付けるマーケットの流動性や報酬といった魅力を奪いかねない内容が多いことも事実である。

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