サマリー
◆11月10日、キャメロン首相が、英国のEUとの関係の未来像についてチャタムハウスで演説した内容が波紋を呼んでいる。この演説の中で、2017年末までに実施予定のEU残留・離脱を問う国民投票に先立ち、EUに求める4つの改革を明らかにした。投票前に英国にとって有利な改革を引き出し、残留支持を強めるのが首相の意図とされる。
◆金融街シティを抱える英国では、銀行規制の強弱がそのまま金融ハブとしての国際的な競争力を左右する。ニューヨークや香港、シンガポールといった米国やアジアの金融街と熾烈な競争下にあり、EUによる画一的な決定に金融規制強化の方向性が異なるとの不満が絶えない。
◆英国規制当局は、リーマン・ショックを受けて強化された一連のバーゼル規制に加え、独自の規制方針を打ち出してきた。代表的な例を挙げれば、2015年7月に英国健全性規制機構(PRA)が発表した英国の主要行に対するレバレッジ比率規制案がある。英国内預金高500億ポンド超の銀行は、バーゼル規制適用予定(2018年)を前倒し、2016年よりレバレッジ比率3%の達成を求められる。
◆金融界では役職員への報酬が競争力に直結するといっても過言ではない。英国は、EUが提案していた銀行員(バンカー)に対する賞与報酬規制(ボーナスキャップ)に関しては当初から難色を示していた。シティでは、EUに留まる限り中央集権的な金融規制の強化が続くのではと懸念する声が相次ぐ。特に最近の金融規制改革は、市場参加者を引き付けるマーケットの流動性や報酬といった魅力を奪いかねない内容が多いことも事実である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
-
欧州経済見通し 「トランプ」が欧州連帯を促す
貿易摩擦激化の可能性が高まる一方、国防費の増加議論が急展開
2025年03月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日