サマリー
◆中東などからEUを目指す難民が急増している。背景にはシリアでの内戦長期化のほか、中東、アフリカ、アジアでイスラム過激派が勢力を拡大させていることなどがある。船で地中海を渡る海ルートに加えて、バルカン半島を縦断する陸ルートの活用が活発化し、その玄関口となるイタリア、ギリシャ、ハンガリーなどで難民受け入れ態勢が機能不全に陥っている。難民の多くは、難民認定に比較的寛容で、受け入れ態勢の整ったドイツを目指しており、ドイツは緊急措置としてハンガリーで足止めされていた難民の受け入れを決断したが、その数は2日で1.5万人を超え、さらに増加する見込みである。
◆難民の窮状を目の当たりにして、EUの難民政策の見直しが急務となっており、9月14日にEU内務相・法相閣僚会議が緊急に開催されることになった。ドイツとフランスは、(1)バルカン諸国などを「安全な出身国」と認定し、これらの国々からの難民申請者を難民認定の対象外とする、(2)難民急増地域(イタリア、ギリシャ、ハンガリーなど)に2015年末までにEUが難民認定手続きセンターを開設する、(3)難民認定者の受け入れはEU各国で公平に分担することなどを共同提案している。
◆ただし、難民の受け入れは総論賛成、各論反対となりやすいテーマである。特に難民受け入れを各国に義務づけるという独仏の提案に対しては、早くも中東欧の4カ国が共同で反対声明を出しており、また英国も慎重姿勢である。共通難民政策の見直し過程においては、EUの分裂が意識されたり、各国のEU懐疑派が勢いづいたりすることが懸念される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し トランプリスク再来
追加関税で対米貿易摩擦懸念が再燃/欧州経済中期見通し
2026年01月21日
-
2026年の欧州経済見通し
不確実性低下、財政拡張で景気回復ペースは再加速へ
2025年12月23日
-
欧州経済見通し 成長再加速の兆し
景気の下振れリスク緩和でECBの追加利下げ観測は後退
2025年11月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
-
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日

