サマリー
◆2015年6月25日、緊急のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)が前日に続きブリュッセルで開催され、ギリシャへの第2次支援プログラムの最終合意について協議が行われた。債権団側は、ギリシャの新改革案に対する修正案(対案)を提示し、ギリシャへの改革を迫ったが、ギリシャ側は受け入れられないとして協議は平行線のまま終了、協議は6月27日の朝からの緊急閣僚会合に持ち越されることとなった。
◆次回協議から支援プログラムの最終期限である6月30日まで時間も無く、たとえ今週末に最終合意に至ったとしても各国議会での承認を得ることは容易ではない。一方、チプラス首相を中心としたギリシャ政府交渉団からは焦りの色が見られず、時間を稼ぎ、ギリシャのデフォルト(およびユーロ圏離脱)を回避する政治的な判断に持ち込む意図すら見え始めている。
◆ギリシャ側に余裕がある理由のひとつに、直前に行われたロシア訪問での合意も挙げられるだろう。ロシア産ガスをトルコに供給するパイプラインをギリシャまで延長する「ターキッシュ・ストリーム」計画の最終合意により、ギリシャはパイプライン使用料として安定的な収入の確保に加え、パイプラインの建設費用20億ユーロは全てロシア側負担など、チプラス政権は間接的な資金援助を受け取る形となった。
◆シティでは、たとえ今回ギリシャがGrexitへのレッドライン(最後の一線)に踏みとどまり、ユーロ圏崩壊のリスクが一旦沈静化しても、ギリシャのEU残留への賛否は分かれている。ユーロ圏の真のリスクは、ユーロ離脱後、想定以上に早くギリシャ経済が回復する状況を目の当たりにした場合の、他の南欧周縁国への影響ではないだろうか。ユーロに留まるための唯一の選択肢が緊縮財政の継続であることへの不満が爆発し、我先にギリシャの成功モデルを追い求め、ユーロ圏を離れ「Spexit」や「Italexit」が起こる可能性は低いとはいえない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日