サマリー
◆2015年4月24日、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)がラトビアの首都リガで開催され、ギリシャへの第2次支援プログラムの4ヵ月間の延長について協議された。協議では過熱した論議が繰り広げられたが、結局、最終合意に至らずブリュッセルグループ(EU、IMF、ECBの旧トロイカ)による72億ユーロの融資実行は延期された。
◆4月27日にはこれまでギリシャ側交渉団を主導していた、バルフォキス財務相を相談役に更迭、ツァカロトス外務副大臣をトップに充てる人事が発表された。ただし、責任者の一人を交渉の第一線から退けたところで状況が大きく変化するとは考えづらい。債権団を説得するだけの改革案を作成する余力が、既にギリシャ政府および作成を主導するギリシャ財務省の担当官僚に残されていないことは容易に想像できる。
◆また仮に6月末の第2次支援プログラムの延長が合意されなかった場合、その時点でECBがギリシャ向けの緊急流動性支援(ELA)を停止することは確実であり、ギリシャとの取引が中止されギリシャ中銀は新通貨発行に追い込まれる。さらにデフォルトと認定されることで、ユーロ圏周辺国の金利は急上昇し、ECBはその結果としてイタリア、ポルトガル等の南欧諸国に対するOMT(危機時にECBが国債を買い入れするプログラム)等の発動を余儀なくさせられるだろう。
◆ギリシャが厳しい改革条件を突きつけられるユーロ圏内にいつまでも留まるとも想定しづらい。ここに来てロシアの存在感が増している。4月初めにはチプラス首相がクレムリンを訪問し、プーチン大統領に7月に期限切れとなるEUによる対ロ経済制裁の解除をほのめかすなど、支援継続に難色を示すEUとの対立姿勢をちらつかせている。ギリシャとロシアは、文化・宗教的な面で結びつきも強く、両国の関係は新たな経済圏の枠組みを予感させる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日