サマリー
◆ユーロ圏の2014年10-12月期GDP成長率は前期比+0.3%に加速し、2014年年央の景気停滞を抜け出しつつある。2014年通年では+0.9%と3年ぶりのプラス成長となった。10-12月期の成長率押し上げに貢献したのはドイツとスペインで、共に前期比+0.7%に成長率が加速した。他方でフランス(同+0.1%)、イタリア(同横ばい)は停滞しているが、マイナス成長は免れた。需要項目別の内訳は未発表だが、原油安とユーロ安を追い風に、個人消費と輸出が伸びたと推測される。
◆1月22日にECBは国債購入を通じた量的緩和策の導入を決めた。1月25日のギリシャ総選挙の直前に決定されたこの追加緩和策は、ギリシャ新政権とEUが財政支援の継続の是非をめぐって対立し、ギリシャ不安が再燃する中で、ギリシャ以外のユーロ圏各国の国債利回りが高騰することを防いでいる。さまざまな追い風を得て、ユーロ圏景況感はここ数ヵ月改善傾向にあるため、ユーロ圏の2015年の成長率は+1.1%と低成長ながら回復を続けると予想する。ただし、ギリシャ問題に加え、ウクライナ・ロシア問題など解決に時間がかかり、景気下振れ要因となりうる材料は少なくない。
◆英国の2014年の成長率は+2.6%となり、リーマン・ショック以前の2007年以来7年ぶりの高い伸びとなった。失業率が低下傾向にあることに加え、物価低下で実質賃金上昇率が6年ぶりにプラスの伸びに転じたことを追い風に、2015年も個人消費を牽引役として+2.3%の経済成長が予想される。なお、1月の消費者物価上昇率は原油価格下落が主因となって前年比+0.3%に低下し、年央までにこれがマイナスの伸びとなる可能性も否定できない。BOE(英中銀)は年内については政策金利を据え置く可能性が高まったと予想される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
-
欧州経済見通し 「トランプ」が欧州連帯を促す
貿易摩擦激化の可能性が高まる一方、国防費の増加議論が急展開
2025年03月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日