サマリー
◆1月22日のECB金融政策理事会ではついに国債購入プログラムの採用が決定されると予想される。直接の原因は原油価格急落だが、ユーロ圏の12月の消費者物価上昇率は前年比-0.2%に落ち込み、消費者と企業の物価見通しは低下傾向にある。これに歯止めをかけ、また、ユーロ圏内の企業向け融資を活性化させて投資拡大につなげることが追加緩和策の目的である。もっとも1月25日にギリシャの総選挙を控える中で、国債購入プログラムの詳細な実施方法の決定は次回の3月5日のECB理事会に先送りされる可能性がある。
◆ECBの量的緩和策が物価見通しの改善や企業向け融資の活性化に効果を発揮できるか疑問視する見方は少なくない。特にドイツではECBがユーロ圏加盟国の国債を購入することに対して根強い反対意見がある。一方、ECBの金融緩和への期待からドイツの主要株価指数であるDAX指数は1月に改めて最高値を更新した。また、金融緩和でユーロ安となったことが、原油価格下落と相まって、景気見通しの改善をもたらしている。ドイツの6か月先の景気見通しであるZEW指数は11月以降、3か月連続で改善し、2014年後半に停滞感を強めていたドイツ経済が2015年は立ち直りを見せることが期待されている。ユーロ圏の2015年の経済成長率は、2014年の+0.8%(推計値)から+0.9%と低成長が継続する見込みだが、年後半に徐々に加速する展開となろう。
◆英国の2014年の成長率は、GDP統計の遡及改訂の影響で従来予想の+3.0%には届かないものの、+2.6%の堅調な伸びになったと推測される。2015年も金利低下と原油価格下落を追い風に、消費主導で+2.3%の経済成長が予想される。原油価格下落が主因となって、12月の消費者物価上昇率は前年比+0.5%に低下したが、少なくとも年央まで同1%を下回る低インフレが継続するとみている。消費主導で景気回復が継続している英国で、BOE(英中銀)の次の一手は利上げと予想しているが、そのタイミングを判断する上で、賃金上昇率が加速してくるかどうかに注目している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/6/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年06月03日
-
テキサス州による議決権行使助言業者規制
財務的利益以外の要素を考慮する助言である場合、その説明を求める
2025年06月03日
-
2025年1-3月期法人企業統計と2次QE予測
前年比で増収増益も製造業は不調/2次QEではGDPの下方修正を予想
2025年06月02日
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
“大規模で美しい”軍事パレードはピーナッツか、それとも特大のプレゼントか
2025年06月04日
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日