欧州議会選挙が"金融シティ"へ与える影響

移民政策とユーロ圏主導の金融規制の狭間に立たされる金融街

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2014年05月20日

サマリー

◆本年は、5年に1度実施される欧州議会選挙が5月22日から25日にかけて予定されている。リスボン条約により、欧州委員会の委員長候補の選定に当たり、欧州議会選の結果を考慮することが義務付けられたため、議会選に対する政治的な意味合いが強まったことも話題を呼んでいる。


◆今回の選挙では、欧州債務危機とその後に続いた緊縮財政などにより、加盟国の多くにEUに懐疑的な右派が台頭している。議会審議に影響を与えるほどEU懐疑派が躍進した場合には、新たな金融規制に向けた法案の審議が遅れるなどして、EU統合のプロセスを乱す可能性はある。


◆シティでは、EUに留まる限り、EU統合の深化を象徴する中央集権的な金融規制の強化が今後も続くことに対して懸念する声が増えつつある。特に近年の金融規制は、金融ハブとして参加者を引き付ける市場流動性や報酬といった魅力を奪いかねない内容が多い。英国では2015年5月に予定されている総選挙において、保守党が単独与党として勝利した場合、キャメロン首相がEU残留を問う国民投票を(2017年までに)実施する構えである。


◆EU離脱によりシティで最も警戒されているのは、金融街に集まる多彩な人材確保が困難になることといえる。EU離脱を問う国民投票を宣言するまでに至った英国だが、EUという単一市場の恩恵を特に人材面(移民)で享受し続けていたことは紛れもない事実である。高度金融人材の安定供給の源である移民政策とユーロ圏主導の金融規制強化の狭間に揺れる現在のシティの実情は、他国の金融街の将来設計にも疑問を投げかける点が多いといえよう。

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