サマリー
◆本年は、5年に1度実施される欧州議会選挙が5月22日から25日にかけて予定されている。リスボン条約により、欧州委員会の委員長候補の選定に当たり、欧州議会選の結果を考慮することが義務付けられたため、議会選に対する政治的な意味合いが強まったことも話題を呼んでいる。
◆今回の選挙では、欧州債務危機とその後に続いた緊縮財政などにより、加盟国の多くにEUに懐疑的な右派が台頭している。議会審議に影響を与えるほどEU懐疑派が躍進した場合には、新たな金融規制に向けた法案の審議が遅れるなどして、EU統合のプロセスを乱す可能性はある。
◆シティでは、EUに留まる限り、EU統合の深化を象徴する中央集権的な金融規制の強化が今後も続くことに対して懸念する声が増えつつある。特に近年の金融規制は、金融ハブとして参加者を引き付ける市場流動性や報酬といった魅力を奪いかねない内容が多い。英国では2015年5月に予定されている総選挙において、保守党が単独与党として勝利した場合、キャメロン首相がEU残留を問う国民投票を(2017年までに)実施する構えである。
◆EU離脱によりシティで最も警戒されているのは、金融街に集まる多彩な人材確保が困難になることといえる。EU離脱を問う国民投票を宣言するまでに至った英国だが、EUという単一市場の恩恵を特に人材面(移民)で享受し続けていたことは紛れもない事実である。高度金融人材の安定供給の源である移民政策とユーロ圏主導の金融規制強化の狭間に揺れる現在のシティの実情は、他国の金融街の将来設計にも疑問を投げかける点が多いといえよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 追加関税の影響が顕在化
米国向け輸出が急減、対米通商交渉の行方は依然不透明
2025年06月24日
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
-
「九州・沖縄」「北海道」など5地域で悪化~円高などの影響で消費の勢いが弱まる
2025年7月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年07月14日
-
2025年5月機械受注
民需(船電除く)は小幅に減少したが、コンセンサスに近い結果
2025年07月14日
-
不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース(TISFD)の構想と日本企業への示唆
影響、依存、リスクと機会(IDROs)をいかに捉え、対処するか
2025年07月14日
-
トランプ減税2.0、“OBBBA”が成立
財政リスクの高まりによる、金融環境・景気への悪影響に要注意
2025年07月11日
-
中央値で見ても、やはり若者が貧しくなってはいない
~20代男女の実質可処分所得の推移・中央値版
2025年07月14日
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日