サマリー
◆ユーロ圏債務危機では銀行部門と政府部門の債務悪化の連鎖が最大の懸念となり、懸念が懸念を呼ぶ危機拡散局面が長期化した。ようやく2012年夏にEUやECBによる危機対策進展が評価される形で金融市場の危機感は沈静化へ転じ、そこから2013年末までの1年5か月は危機が収束へ向かう局面となっている。2013年末のスペインとイタリアの10年国債利回りとドイツ10年国債利回りとのスプレッドは、両国の債務懸念が一気に高まった2011年秋以前の水準まで低下した。
◆危機対策とは①ユーロ圏各国に財政健全化と競争力向上の実現を義務付け、②国家財政破綻と銀行の連鎖破綻を回避するための支援基金設立と監視体制の強化、③欧州統合のさらなる推進、である。このうち①の副作用でユーロ圏は2011年末から1年半に及ぶ景気後退を経験したが、2013年半ばに景気回復が始まり、これは緩やかながら2014年も継続すると見込まれる。
◆2014年の危機対策の筆頭課題は欧州統合推進の具体策の1つである銀行同盟の推進と考えられる。銀行同盟の3本柱のうち、ECBを銀行監督の頂点に据えるSSM(単一監督制度)は2014年11月のスタートが決まっている。また、SSMを機能させるために必要なSRM(単一破綻処理制度)法案に関して2013年12月のEU財務相会合で基本合意に達した。ただ、合意はしたものの、各国代表であるEU理事会、EUの意見を代表する欧州委員会、当事者となるECBなどのさまざまな意見の妥協の産物で、きちんと機能するか疑問視されている。2014年5月までに、このSRMの詳細を詰める作業が予定されており、そこでより機能性の高い仕組みを作れるかが最初の関門となろう。
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