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公的年金をスリム化し社会保障費を軽減する英国年金制度

物価連動国債の投資へ傾斜する英国年金

2013年12月09日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

ロンドンリサーチセンター 研究員 沼知 聡子

サマリー

◆近年、英国の年金制度は、少子高齢化に向け賦課方式の継続のために、公的年金をスリム化して社会保障費を軽減する道を模索している。その受け皿として、私的年金を多様化させる方向にあり、これは世界有数の福祉国家であるデンマーク等の北欧諸国とは異なる制度といえる。


◆英国では高齢化が進む一方で、700万人とも推定される退職準備資産を十分に持たない層の存在を受け、退職後の貯蓄強化を目的に2008年年金法(Pensions Act 2008)が導入された。この法律により、2012年10月より一定条件を満たす被用者は職域年金(英国の企業年金)に自動加入することが義務付けられることとなった。職域年金がそもそも存在しない組織に就労している場合には、雇用主を通じて信託ベースの確定拠出型年金スキームである国家雇用貯蓄信託(NEST:National Employment Saving Trust)へ自動加入することができる。


◆2004年の年金法(Pensions Act 2004)の施行以降、確定給付企業年金を解散する企業が相次ぎ、閉鎖年金が急速に増加している。英国の閉鎖年金は、株式投資の比率を低下させると同時に低リスクでかつ株式と同様にインフレ時に資産価値が高まり他の資産と相関が低い商品を模索していたと考えられる。その中でも、特に物価連動国債への投資が顕著であり、2011年末の時点で英国物価連動国債発行残高の40%以上を年金基金が保有している。


◆オズボーン財務相は、12月5日の財政演説にて、年金支給開始年齢を2050年以降は70歳以上に引き上げることを言及するなど、英国では社会保障費改革の手綱を今も緩めることはしていない。運用面、制度面からみても英国の年金基金の動向には、日本の年金改革やその問題点を紐解く糸口があるのかもしれない。

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