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欧州の資産査定とストレステスト

銀行同盟に備えて複雑すぎるバーゼル規制はシンプルになるのか?

2013年10月25日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

ロンドンリサーチセンター 研究員 沼知 聡子

サマリー

◆2013年10月23日、欧州中央銀行(ECB)は、域内銀行への資産査定 (AQR)およびストレステストを含む包括的審査の詳細を発表した。同審査の目的は、主に銀行セクターの健全性を確認し、必要であれば不良資産の処理を求め、欧州債務危機で失ったステークホルダーから信頼を回復することとしている。同審査は11月から実施し、2014年10月まで1年をかけて完了させるものとしている。ECBによる審査の対象は、ユーロ圏の主要銀行128行(域内銀行資産の85%相当)とされている。


◆銀行同盟の事前準備として、各国間で統一したリスクアセットの基準作りは不可欠といえる。今回の包括的審査の目的のひとつとして、各国間で比較が困難であったリスクベースでの資産審査の標準化が挙げられる。当局検査時に各国間の資産の比較を容易にさせることで銀行監督の一元化に大きく弾みをつけることにある。


◆ただし一抹の不安を覚えるのは、いくらローンポートフォリオの精査を行ったところで、国をまたいだ与信リスク管理は困難を伴うことであろう。特に、経済環境、生産性、企業風土、など大きく違う状況を考慮したうえで、不良債権やデフォルト率など各国間で同じ基準で計測することは、さらなる困難を伴う。ましてや、銀行監督を「統合」することの複雑さが、リスクアセットの複雑さを上回っては本末転倒といえる。


◆今回の包括的審査の基準をもとに「統合」ありきで銀行同盟が進められることは、いつか来た道を再び進むことになるであろう。単一通貨ユーロ統合の失敗の本質は公務員天国と揶揄されたギリシャやその「国民性」が怠惰とも言われるイタリアにあるのではなく、そもそも「統合」ありきの議論が先行したことにあるといえる。複雑すぎるバーゼル規制を簡素化するにはまだまだ課題が山積みであり、ECBおよびEBAには慎重な「統合」へのステップを期待したい。

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