欧州の銀行同盟はどこまで進んだか

第一の柱の単一監督制度(SSM)は2014年中の始動を目指す

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2013年10月11日

サマリー

◆9月12日に欧州議会がEU(欧州連合)銀行同盟の第一の柱である単一監督制度(SSM)に関する法案を可決した。次のEU首脳会議でこの法案が承認されれば、1年後の2014年11月にECB(欧州中央銀行)がユーロ圏の銀行監督の総責任者に就任する。


◆ECBはその前にユーロ圏の主要130~150銀行に関して資産審査(AQR)を実施する方針を明らかにしており、10月中にその詳細を発表する予定である。AQRは2014年春から夏にかけて実施される予定だが、そこで各銀行の資産内容を厳しく審査し、必要に応じて資本増強することが肝要となる。


◆銀行同盟にはほかに単一破綻処理制度(SRM)と共通預金保険制度という柱がある。このうちSRMに関しては、欧州委員会が7月に法案を提出し、遅くとも2014年3月の法案成立を目指している。ところが、10月にEUの法律顧問から単一破綻処理を担当する機関の権限が大きすぎてEU条約に抵触すると指摘され、法案の見直しが必要になる可能性が出てきている。一方、共通預金保険制度に関しては、ユーロ圏各国の意見対立が大きく、まだ具体的な進展がほとんどない状況である。


◆SSMに比べ、SRMと共通預金保険制度の取り組みが遅れているのは、後者が各国の資金負担を伴うためである。ただ、銀行破綻処理や預金保護といった場面で費用分担する仕組みは、EUがその統合深化で目指している「財政統合」の一つのルートと考えられる。このようなルートを内包する銀行同盟を完成できるか、欧州の政治家たちの「統合深化」に向けた本気度が試される。

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