サマリー
◆英国で不動産価格の上昇が加速している。住宅金融組合最大手であるネーション・ワイドが発表する価格指数によると、2013年7月の住宅価格は前年同月比3.9%と2010年9月以来の大幅な上昇を記録した。金融危機以降、著しい復調を見せる不動産市況を背景に、超低層都市であったロンドンも建築物が高層化する傾向にある。金融街シティでは不動産再開発が加速しており、高層ビルの建設が至る所に目立つようになった。
◆急激に不動産価格が上昇している要因としては、超低金利政策の継続によるものが大きい。2009年3月以降、英国中央銀行(BOE)は、政策金利を設立以来最低水準となる0.5%に据え置くと同時に、量的緩和政策による国債の買い入れも実施している。8月にBOEが導入したフォワード・ガイダンスも、更なる不動産価格の上昇を促すといわれている。
◆さらに最も不動産価格の上昇を助長させているのは、今年から実施されている英国政府の持ち家購入支援スキーム(Help to buy scheme)との見方も強い。同スキームに対しては、当初の目的であった家計の住宅価格購入を援助するのにとどまらず、不動産開発業者や家主などが高騰した価格で売り抜けることを容易にさせるため、購入支援ではなく売却支援(help to sell)と批判する声もある。
◆英国では持ち家志向が強く、2015年の総選挙に向け、住宅政策は大きな争点になることが予想される。住宅購入がままならない、失われた世代(20代後半~30代前半)は、自分たちよりも前の世代が享受し続けてきた住宅の所有権を手にできないことに、非常に大きな失望感を抱いている。さらに、その親、祖父母の世代からも、将来の住宅事情を憂慮する声が上がっており、これに主要政党がどのような対処をするかが注目されている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
欧州経済見通し 輸出環境が一段と悪化
米国の追加関税率は30%に引き上げへ、ユーロ高も輸出の重荷に
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日