サマリー
◆欧州の銀行では、バーゼルⅢでのレバレッジ比率規制改正案の発表を受け、新たなデレバレッジの機運が高まりつつある。ただし圧縮する資産の中心は、規制強化の本来の意図である証券金融取引(SFT)ではなく、各行の資本コストに見合わない中小企業向け融資や未使用のコミットメントラインとなる可能性もある。
◆今回の改正案で最も懸念されているレポ取引に対して、シティでは大規模なアンワインド(巻き戻し)はいまだ確認されていない。欧州に拠点がある金融機関はレポ取引に与える影響調査を急ぐ一方、他行が、いつ、どこでレポ取引を縮小させるかを見定めているのが真相のようだ。
◆特に欧州中央銀行(ECB)により実施された3年長期資金供給オペ(LTRO: Long Term Refinancing Operation) は、調達資金の増加に加えて証券金融取引として認識されるため、レバレッジ比率を大幅に低下させるといわれる。欧州の銀行は、バランスシートを膨張させる余剰資金の縮小に向けてLTROの早期返済が加速する可能性も否定はできない。そうなれば本来の規制の意図から外れた形で、ユーロ圏の金融政策へ思わぬ副作用が働くことを意味する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日