サマリー
◆欧州危機は、単一通貨・統一金融政策下で、統一されていない財政政策の協調を問う機会となった。独・仏が提案した「競争力強化に向けた協定」をきっかけに議論は進むが、各国の利害関係を調整した結果、当初の案よりもトーンダウンした「Euro Plus Pact」の成立に至った。協定の実効性と拘束力には疑問が残り、財政協調は明示的な形で進んでいない。この議論が示したことは2点ある。
◆まず「Euro Plus Pact」までの議論は、財政協調の困難性を確認する場と化してしまった。極力政治的歪曲を排除するため、欧州委員会などの第三者が介入を強める必要がある。
◆もう一点は、将来ユーロ導入を行う予定の非ユーロ諸国が抱く、財政協調さらには金融政策統一に対する意識が総じて低い点である。その背景には、「Euro Plus Pact」の実効性の問題の他に、非ユーロ諸国側が抱く単一通貨という魅力が、欧州危機を契機に損なわれた点がある。今回の財政強調に関する議論は、「EU 加盟の後、ユーロを導入」という一連のプロセスが必ずしも成立せず、ユーロ圏の拡大にも疑問を投げかけたといえるだろう。
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