サマリー
◆2011年2月9日、英国政府は、「プロジェクト・マーリン(ProjectMerlin)」という、貸出増加、報酬抑制等に関する主要銀行との間の合意事項を公表している。合意に応じた銀行は、英国4大銀行であるBarclays、HSBC、LloydsBankingGroup、TheRoyalBankofScotland、そしてスペインのSantander(貸出増加の合意のみ)である。
◆プロジェクト・マーリンは、銀行側の主導で、金融危機以来傷ついた銀行のイメージ救済を目的とした、政府との平和(休戦)協定という位置づけで協議を開始し、合意に至っている。
◆重要な合意事項は、中小企業(SME)向け貸出の15%増加(前年度比)と、UKに拠点を置くスタッフに対する2010年度分ボーナスの減少(2009年度分比)である。
◆ボーナスの減少は、この合意がなくとも、インベストメント・バンキング部門の収益減少や金融サービス機構(FSA)の新報酬規程により達成されることが見込まれたため、何らインパクトをもたらすものではない。
◆SME貸出は、四半期ベースでは合意された数字に追いついていないが、それはSME側の貸出需要が不足していたためである。また、そもそもSME市場活性化の最大の障害は銀行セクターにおける競争の欠如にあり、貸出可能金額を設定するというアプローチは的外れである。
◆このように、2010年末の協議開始時から英国のメディアを賑わせているプロジェクト・マーリンではあるが、現時点ではネガティブな評価を下さざるを得ない。もっとも、SME市場活性化が実現した暁には、その要因によっては、プロジェクトの評価がポジティブに変わっている可能性がある。
◆プロジェクト・マーリンは、銀行側の主導で、金融危機以来傷ついた銀行のイメージ救済を目的とした、政府との平和(休戦)協定という位置づけで協議を開始し、合意に至っている。
◆重要な合意事項は、中小企業(SME)向け貸出の15%増加(前年度比)と、UKに拠点を置くスタッフに対する2010年度分ボーナスの減少(2009年度分比)である。
◆ボーナスの減少は、この合意がなくとも、インベストメント・バンキング部門の収益減少や金融サービス機構(FSA)の新報酬規程により達成されることが見込まれたため、何らインパクトをもたらすものではない。
◆SME貸出は、四半期ベースでは合意された数字に追いついていないが、それはSME側の貸出需要が不足していたためである。また、そもそもSME市場活性化の最大の障害は銀行セクターにおける競争の欠如にあり、貸出可能金額を設定するというアプローチは的外れである。
◆このように、2010年末の協議開始時から英国のメディアを賑わせているプロジェクト・マーリンではあるが、現時点ではネガティブな評価を下さざるを得ない。もっとも、SME市場活性化が実現した暁には、その要因によっては、プロジェクトの評価がポジティブに変わっている可能性がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
欧州経済見通し 輸出環境が一段と悪化
米国の追加関税率は30%に引き上げへ、ユーロ高も輸出の重荷に
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日