サマリー
◆2023年10月、これまで半年以上政策金利を据え置いていたインドネシアとフィリピンが利上げを発表した。利下げを始める新興国も多い中で、一部のASEAN諸国が利上げを行った理由は、対ドル為替レートの下落にある。米国との金利差縮小やASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の実質金利の低さといった資本取引要因による影響が大きい。
◆ASEAN5の経済統計を見ると、フィリピンを除く4カ国では、好調なサービス産業、低いインフレ率、経常赤字の縮小といった点で、ファンダメンタルズが改善している。米国の「利上げ終了」観測が市場で強まれば、各国のファンダメンタルズが再び評価され、為替レートも安定しやすいだろう。一方で、高インフレと経常赤字を抱えるフィリピンは、唯一為替レートへの下落圧力が続きやすい。
◆2024年は、ASEAN5各国でも利下げの議論が始まるだろう。米国の金融政策による影響を受けやすい点に鑑みると、各国が利下げを開始するのは、米国が利下げを開始してからになるだろう。そのような中、ASEAN各国の金融政策の舵取りが再び難しくなるのは、米国が利下げを開始する段階で、同国のリセッションリスクが高まる場合である。市場でリスク回避の動きが強まり、ASEANからも資本が流出しやすくなるためである。そうなれば、米国の利下げ以降も、ASEAN各国はしばらく利下げに踏み切れない状況が続くだろう。
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