サマリー
◆2022年のASEAN5経済(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)は、内需・外需ともに総じて好調であった。特に、行動制限の緩和に伴って繰越需要が発現したサービス産業の回復が目覚ましかった。しかし2022年秋以降、積極的な利上げを背景とした米国の景気減速、中国の「ゼロコロナ政策」、資源価格の下落、「デジタル特需」の一巡による影響で、ASEAN5からの輸出に減速感が強まった。
◆2022年末に中国の「ゼロコロナ政策」が解除されたことで、2023年のASEAN5を取り巻くリスクは、主に米国の景気減速と「デジタル特需」の一巡となった。これらによる影響を受けやすいのは、輸出依存度が高くかつ電子機器輸出の規模が大きいマレーシアとベトナムだろう。逆に、「内需型経済」で資源価格回復による恩恵を受けやすいインドネシアや、海外出稼ぎ労働者による安定的な送金が消費を下支えしているフィリピンへの影響は限定的だろう。
◆ASEAN5のサービス輸出の大半は、観光収入によるものである。中国人観光客の呼び戻しによって最も恩恵を受けやすいのは、観光収入の規模が大きくかつ中国人観光客への依存度が高いタイだろう。
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