サマリー
◆米国をはじめとする先進国の大幅な利上げと、それをきっかけとした先進国の景気減速・後退観測が、新興国通貨の米ドルレートに対する下落圧力を高めている。ASEAN諸国の中では、「資源輸入国」であるフィリピン、タイ、マレーシアの対ドルレート下落率が大きい一方、過去に「フラジャイル(脆弱)」と呼ばれたインドネシアの通貨ルピアの下落率は比較的小さい。インドネシアはもはや、「フラジャイル」ではないのか。
◆インドネシアルピアの下落を緩和しているのは、経常収支の黒字転換と、インフレを抑え込むだけの財政余地の拡大である。それを可能としたのは、コロナ禍からの世界的な経済再開への動きと「脱炭素化」への流れ、そしてウクライナ危機である。これらの出来事を背景に、インドネシアからは加工ニッケル(ステンレス鋼や電気自動車(EV)のリチウム電池に使用)と石炭輸出が増加し、経常黒字への転換と財政赤字の縮小が可能となった。
◆しかし、資源価格上昇の恩恵を受けた経常黒字が、今後も保証されるとは言い難い。IMFは、インドネシアの経常収支が2024年以降、再び赤字に転換すると予想している。今後注目すべきは、この経常赤字をファイナンスする直接投資の動向である。政府はその起爆剤として、ニッケル資源を活かしたEV生産拠点の育成に力を入れ、韓国や中国企業が次々と投資を進めている。EV産業の発展は、資源価格の変動に左右されにくいことから、「資源依存型経済」からの脱却手段として有望だろう。そういった意味で、今後の同国におけるEV産業の動向は、インドネシアが本格的に「フラジャイル」から脱却できるかどうかの鍵を握っているといえる。
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