サマリー
◆2022年7月、ロシア中央銀行(中銀)は、政策金利をウクライナ侵攻以前の水準(9.5%)を下回る、8.0%に引き下げた。ルーブル相場が安定し、消費者物価の上昇速度が鈍化している点が背景にある。これにより、西側諸国による制裁の効果に疑問を持つ声が大きくなっている。
◆西側諸国による対ロ制裁は、主にロシアの内需に影響を与えている。ハイテク品などの輸出規制で、資本財を輸入に依存する製造業が落ち込んでいるほか、前年比二桁のインフレ圧力を背景に実質賃金が大きく減少し、小売への影響も見られる。他方で、ロシア産エネルギーの輸入規制の効果は2023年になるまで見えにくい。
◆ロシア中銀とIMFは、ロシアの2022年の成長率予測を上方修正し、2023年を下方修正した。2022年は、制裁の影響で内需の悪化が進む一方、ロシアからのエネルギー輸出が底堅く推移すると見込まれるためである。しかし、2023年になると、EUによるロシア産エネルギー輸入停止の効果が発現するとみられる。この影響で、2023年のロシアの実質GDP成長率は、2年連続でマイナスとなる可能性が高い。制裁の影響は長期化し、ロシア経済が安定した成長路線に戻る道筋は見えにくい。今般の制裁は失敗ではなく、ロシア経済に負の影響をもたらしていることは確かと言えるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
インド:所得減税・GST改正の効果は?
GST税率引き下げは耐久財消費を喚起。企業投資につながるか注視
2025年11月14日
-
インドネシア:弱含む内需への対応策は?
雇用問題が消費者心理に影響。ヒト・モノへの投資バランス調整を
2025年11月13日
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/12/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年12月02日
-
「年収の壁」とされる課税最低限の引上げはどのように行うべきか
基礎控除の引上げよりも、給付付き税額控除が適切な方法
2025年12月02日
-
2025年7-9月期法人企業統計と2次QE予測
AI関連需要の高まりで大幅増益/2次QEでGDPは小幅の下方修正へ
2025年12月01日
-
「2030年に女性役員比率30%」に向けた課題
TOPIX500採用銘柄における現状、変化、業種別の傾向等の分析
2025年12月01日
-
なぜ今、ベトナム市場なのか:外国人投資家が注目する理由
2025年12月01日

