サマリー
◆ロシアによるウクライナ侵攻を契機とした資源高を背景に、IMFは資源輸出国の2022年成長率予測を上方修正した。しかしその中で、資源国であるブラジルの成長率予測は低く、上方修正も小幅にとどまっている。2000年代の資源ブーム時は、資源高に伴う輸出価格の上昇が交易条件を改善させて高成長につながったが、今回は、資源高が単純な「追い風」とはなりにくいようである。
◆その最大の理由は、輸入物価の大幅上昇を主因とするインフレ高進である。エネルギーや食品、工業製品など幅広い品目の価格上昇に、レアル安が加わっているほか、海外からの輸送コストの上昇も響いている。足元の輸入価格は、輸出価格を上回って上昇し、歴史的な高水準となっている。根強いコストプッシュインフレに対し、ブラジル中央銀行(中銀)は、積極的な利上げでインフレ抑制を図っているが、これが内需の下押し要因となっている。
◆2022年後半の物価上昇スピードは、前年の反動で落ち着く見込みであるが、2023年前半までは、インフレ率は目標の上限(2022年は前年比+5.0%、2023年は同+4.75%)を上回る見込みである。またそれ以降も、エネルギーや穀物価格の上昇、レアル安による輸入物価の上昇といった形で、インフレ率が目標を上振れる可能性を排除できない。2022年後半以降、利上げペースは鈍化するだろうが、中銀の金融引き締め姿勢が内需を下押しする展開はしばらく続くだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
-
トランプ関税のアジア新興国への影響と耐性は?
製品によって異なる影響。対外的な耐性は十分もインドネシアに注意
2025年04月16日
-
トランプ2.0、資源面でアジアに恩恵も
米国産LNGがエネルギー移行を促進・重要鉱物の代替供給地になるか
2025年03月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日