サマリー
◆2022年、インドネシアの景気回復スピードは加速するだろう。行動制限の緩和が民間消費の回復を後押しすることに加え、資源輸出が好調となる見通しであるためだ。行動制限が繰り返されない限り、民間消費は2022年前半にはコロナ禍前の水準に戻るだろう。また、石炭のほか、加工ニッケル、銅、パームオイル、ステンレス鋼の輸出増も景気回復の追い風となるだろう。
◆2022年のマレーシア経済は、民間消費と、半導体を中心とした電子機器の輸出が追い風となることで、回復する見込みだ。民間消費は、大規模な景気刺激策が下支えとなりそうだ。2022年1-3月期には、民間消費がコロナ禍前の水準にまで戻るだろう。外需は、国内におけるサプライチェーンの回復と、世界的な需要の増加を背景に、半導体輸出が旺盛となる見込みである。
◆2022年のフィリピン経済は、行動制限の緩和や海外送金の旺盛な流入、そして5月に予定されている大統領選挙を背景に、内需の回復が進むだろう。ただし、利上げと政治的な不確実性がリスクとなりやすい。2022年には、インフレ抑制のための利上げ(100bp)を予測している。
◆タイ経済は2021年9月以降、行動制限の緩和をきっかけに回復に向かいつつある。しかし、2022年に回復スピードは加速しにくいだろう。その理由として、家計債務負担の上昇が消費の足かせとなりやすい点や、半導体・コンテナ不足が輸出に影響を与えやすい点、旅行・観光業の回復が予想よりも遅れる可能性が高い点が挙げられる。
◆ベトナムは、2021年10月以降、「コロナとの共存」を掲げて行動制限の緩和を進めている。雇用環境が回復すると予想される2022年1-3月期以降、民間消費が刺激され、景気回復スピードが加速しそうだ。リスクは、足元の感染再拡大と、それに伴う行動制限強化の可能性である。移動に対する規制が今後強まる場合、内需の本格的な回復は、2022年後半となる可能性もある。
◆2021年11月30日時点で、新変異株オミクロンの市中感染はASEAN5で確認されていない。各国は一部地域からの入国制限の強化を実施しているが、インドネシアを除いて、国内の行動制限を強化する動きは目立っていない。多くの国が経済への打撃を考慮して、行動制限の強化には慎重で、特にタイでその傾向が強い。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
-
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日