サマリー
◆2021年半ば以降、ASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)では新型コロナウイルス「デルタ株」が蔓延した。2021年7-9月期は、各国の内需外需がこの影響を受けた。個人消費の落ち込みが特に大きかったのはベトナムであった。サプライチェーンが寸断されたことで、輸出への影響は、ベトナム、マレーシア、タイで大きかった。
◆ワクチン接種の加速を背景に、ASEAN5の感染状況は、2021年8月末から9月半ばをピークに落ち着いてきている。これを受けて10月以降、各国は行動制限の緩和を進めている。今後は、国内の経済活動が活発化するとともに、国内外の移動も本格化する見通しだ。ただし、その回復ペースは産業ごとに差が生じやすい。最も回復が早いのは、世界的に需要が底堅い電子機器を中心とした製造業で、マレーシアやベトナムの景気回復を後押しするだろう。また、資源への需要の高まりから、インドネシアのパーム油や石炭輸出も堅調となるだろう。一方、サービス産業はまちまちだ。「情報・通信」は比較的堅調で、フィリピンのコールセンターを中心としたビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業は成長を下支えしよう。これに対して、旅行産業の本格的な回復は2022年後半まで待たなくてはならず、タイの景気回復スピードはそれまで緩やかなものにとどまろう。
◆2022年は、財政・金融政策が内需を下支えする効果が小さくなるだろう。タイを除く4カ国は、財政余地が限定的であることから、2022年に大規模な追加景気刺激策を打ち出す可能性は低い。また、米国FRBによるテーパリング等で資本流出懸念のあるインドネシア、物価上昇圧力が高まっているフィリピンでは利上げの可能性がある。
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