サマリー
◆2020年後半のインド経済は、内需主導で目覚ましい回復を遂げた。新型コロナウイルス感染拡大の抑制と活動制限の緩和による人出の回復と、政府によるインフラ投資の加速が背景にある。しかし、2021年に入ってからは景気回復の持続性に不透明感が強まっている。「繰越需要」が一段落したことと、所得・雇用環境の改善が足踏みしていることがその原因である。
◆2021-22年度(2021年4月-2022年3月)のインドの実質GDP成長率は、前年度の反動もあって前年度比+11.1%と予測しているが、コロナ禍の影響が出る直前の2019-20年度と比較すると、+2.5%の低い成長率にとどまる。景気回復の加速が見込めない背景には、感染の再拡大と財政拡大・金融緩和余地の乏しさが挙げられる。
◆インドでは、2021年4月からそれまでを上回るスピードで感染が拡大している。ワクチンの普及は遅れており、活動制限の強化に乗りだす州も現れた。財政支援が期待される中、インド政府は2021-22年度予算の中で、所得支援効果を持つ補助金を削減するとともに、財政赤字削減の方針をも提示した。高水準の財政赤字と一般政府債務残高を背景に、財政拡大の余地が限られているためだ。また、インフレ圧力の高まりから、中銀も利下げに動けず、手詰まり感が強い。これらを背景に、少なくとも2021年4-6月期の内需の悪化は避けられず、その後の回復ペースも緩やかなものとなる見込みである。
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