サマリー
◆2020年のASEAN5(インドネシア・マレーシア・フィリピン・タイ・ベトナム)経済は、ベトナムを除く全ての国でマイナス成長となった模様。2021年は反動で大きくプラス成長となるが、前年同様、各国の回復ペースにはばらつきが見られるだろう。
◆新型コロナウイルスワクチン接種による経済の正常化へ向けた期待が高まる中、ASEANではワクチンの早期確保・接種に取り組んでいる国が多く、その点は安心材料となりそうだ。ワクチンの生産能力には限界があるため、人口の多くが接種を完了するには1年以上かかる見込みである。ただし、ワクチン接種率の上昇に伴い、各国で大規模な行動制限が実施されるリスクは低くなるだろう。
◆ASEAN5で行動制限が解除され、景気回復が加速するのは2021年後半となるだろう。米国・中国向け輸出がドライバーとなり、ベトナム経済は最も回復が早いだろう。同じく輸出依存度の高いマレーシアも、年後半には持ち直す見込みだ。ワクチン接種に積極的であるインドネシアでは、接種率の上昇とともに行動制限の緩和が可能となり、年後半から加速するインフラ投資が景気を支えるだろう。他方、フィリピンにおけるワクチン接種スケジュールは現時点で不透明だ。2022年の大統領選挙に向けてインフラ投資を加速させる予定だが、感染拡大抑制の目途がつく前に行動制限を緩和することは、景気回復をさらに遅らせるリスクがある。タイは、主要産業である観光業の回復の遅れによる影響が大きい。国を跨いだ人の移動が回復するのは早くて2022年と予測されるため、2021年の経済の回復ペースは緩慢となるだろう。
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