サマリー
◆2020年11月に署名が行われた「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」は、東アジア地域で展開されているサプライチェーンの主要ハブ国/地域を1つの経済連携協定(EPA)にまとめた協定で、最大のメリットは、市場アクセスの円滑化である。中国を中心とした三角貿易の発展と、ASEANの存在の高まりが特徴的な東アジア地域において、中国・ASEAN・日本が同じEPAでつながる意義は大きい。
◆日本にとってRCEPは、日中韓をつなぐ初めてのFTAとなる。関税削減・撤廃により日本にもたらされる恩恵は、中・韓と比して大きいとみられる。また、自由貿易圏拡大で経済の強靭化に成功しているベトナムでは、RCEPがさらなる直接投資の呼び込みや輸出を促すものと期待される。市場開放によるベトナムの成功例は、東南アジア諸国にも好影響を与えている。他方、国内回帰への動きが懸念されるのがインドである。インド国内における市場開放に対する反対の強さと、産業構造の転換の難しさに鑑みると、インドのRCEP参加には時間がかかりそうだ。インドが地域のサプライチェーンから取り残されるリスクに注視したい。
◆中国のTPP参加への意欲表明は、政治的な意図が大きく、その実現へのハードルは非常に高い。TPPの水準維持と、RCEP地域における制度・ルールの整備継続という点で、日本への期待は大きい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
-
米国抜きの連携拡大~CPTPPのEU拡大が意味すること
「反米色」を排除しながら自由貿易の枠組みを強化、アジアに恩恵も
2025年07月23日
-
インド経済は堅調か?2025年度Q2以降の見通し
個人消費とインフラ投資がけん引役。利下げが都市部の消費を刺激へ
2025年07月07日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日