アジアにとってRCEPは何を意味するか

日本に期待されているのは、TPPの水準維持とRCEPによる地域底上げ

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2020年12月09日

サマリー

◆2020年11月に署名が行われた「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」は、東アジア地域で展開されているサプライチェーンの主要ハブ国/地域を1つの経済連携協定(EPA)にまとめた協定で、最大のメリットは、市場アクセスの円滑化である。中国を中心とした三角貿易の発展と、ASEANの存在の高まりが特徴的な東アジア地域において、中国・ASEAN・日本が同じEPAでつながる意義は大きい。

◆日本にとってRCEPは、日中韓をつなぐ初めてのFTAとなる。関税削減・撤廃により日本にもたらされる恩恵は、中・韓と比して大きいとみられる。また、自由貿易圏拡大で経済の強靭化に成功しているベトナムでは、RCEPがさらなる直接投資の呼び込みや輸出を促すものと期待される。市場開放によるベトナムの成功例は、東南アジア諸国にも好影響を与えている。他方、国内回帰への動きが懸念されるのがインドである。インド国内における市場開放に対する反対の強さと、産業構造の転換の難しさに鑑みると、インドのRCEP参加には時間がかかりそうだ。インドが地域のサプライチェーンから取り残されるリスクに注視したい。

◆中国のTPP参加への意欲表明は、政治的な意図が大きく、その実現へのハードルは非常に高い。TPPの水準維持と、RCEP地域における制度・ルールの整備継続という点で、日本への期待は大きい。

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