コロナ・ショック:市場の選別が始まった

新興国経済ニュースレター(2020年5月)

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2020年05月12日

  • 児玉 卓

サマリー

◆コロナ・ショックによって新興国全般からカネが逃げ出すという局面はいったん終わった。今起こっているのは、市場の選別である。当面はショック初期の資本流出などによる痛みの軽微な国、厳しい国、および新型コロナウイルスの感染拡大の程度によって、二極化・三極化する状況が続くだろう。

◆その観点では、アジア新興国は勝ち組と目されるが、同地域にはコロナ・ショックが保護主義的風潮を強め、世界貿易の停滞を長引かせる可能性があるという、別種のリスクがある。アジアはサプライチェーンの複雑化、その背景にあるグローバル企業の利益追求の恩恵を受けてきた。しかし今、サプライチェーンは自国回帰を含む単純化に向かう可能性が高まっており、そこではコスト効率のプライオリティは引き下げられざるを得ない。この点にアジア諸国の長期的なリスクがある。

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