サマリー
◆イランに対する関心が世界的に高まっている。2015年7月に欧米など関係6カ国との間で核協議が最終合意され、その後2016年1月には国連安保理決議に基づき経済制裁が解除されたことで、イランが本格的に国際市場へと復帰しつつあるからだ。特に、今回金融制裁が解除されたことでイランとの貿易や投資が可能となったことから、海外からの投資が増加するものと期待されている。
◆イランは約7,800万人とトルコとほぼ同じ規模の人口を抱える中東の大国である。長年にわたる経済制裁でインフレが進み経済は疲弊したが、2013年に穏健派のロウハニ大統領が就任して以降、インフレ率は低下し、2014年には3年ぶりにGDPがプラス成長となった。今後は、経済制裁の解除により原油輸出の増加が見込まれることから安定した成長が予想されている。
◆イランの国家財政の柱は原油、天然ガスなどの豊富な天然資源からの収入である。原油は近年、産出量、輸出量ともに減少していたが、イランは制裁解除を受けて増産に入る姿勢を示している。現在、OPECの一部加盟国とロシアが予定している増産凍結計画には当面参加せず、400万バレル/日までの増産を目指しているが、イランの増産は原油価格の更なる下押し要因となる可能性もある。
◆2月に実施された議会選挙、専門家会議選挙ではロウハニ大統領の政策を支持する穏健派、改革派が大きく躍進した。民意は今回の核合意を支持しており、経済回復を重視しているとみることができる。イラン国内で最も影響力を持つハメネイ師が今後どこまでの改革を許容するかという不透明要素はあるものの、一層の経済開放が進めばイラン経済にとっては大きなプラスとなろう。一方、外交面では1月にサウジアラビアと国交断絶するなど依然として近隣諸国や米国との間では多くの問題を抱えている。今後、イランが本格的に国際社会への復帰を果たすためには、イランに対する懸念を払拭し、緊張を緩和させる努力が必要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
-
トランプ関税のアジア新興国への影響と耐性は?
製品によって異なる影響。対外的な耐性は十分もインドネシアに注意
2025年04月16日
-
トランプ2.0、資源面でアジアに恩恵も
米国産LNGがエネルギー移行を促進・重要鉱物の代替供給地になるか
2025年03月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日