サマリー
◆7月9日、インドネシアで大統領選の投開票が実施された。選挙管理委員会から正式な結果が発表されるのは7月20日以降であるが、各種調査機関による集計を見ると、ジャカルタ特別州知事であるジョコ・ウィドド氏が優勢となっているものが多い。一方、元陸軍戦略予備軍司令官であるプラボウォ・スビアント氏を優勢とする集計結果もある。このため、両候補とも勝利宣言を出す異例の事態となっている。
◆ジョコ氏が大統領に就任した場合、短期的には経済の下押し圧力が強まる可能性が高い。ジョコ氏は渋滞問題を解決するために、LCGC(低価格グリーンカー)への規制導入や燃料補助金の削減等を通じて自動車を使用するコストを引き上げようとしている。特に燃料補助金の削減は高インフレ率ならびに高金利を招く可能性が高く、今後自動車販売や投資などが減速するおそれがある。
◆一方で、中長期的には成長を高める効果も期待できる。まず期待されるのはガバナンスの改善である。ジョコ氏はソロ市長やジャカルタ特別州知事時代に汚職対策に取り組んだ実績があり、今後、ジョコ氏がリーダーシップを発揮して汚職対策を国政レベルでどの程度実行できるかが注目される。さらにジョコ氏は燃料補助金削減によって浮いた資金等でインフラ整備を加速しようとしている。仮にインフラ整備が進み輸送コストが減少すれば、インフレ率が構造的に低下するなどインドネシア経済にとってプラスの効果が期待される。
◆しかしながら、政治が停滞してしまうリスクがいくつか存在する点には留意する必要がある。具体的には、①野党に政治の主導権を握られる、②連立与党の一部が政権に協力しない、③ジョコ氏が所属する闘争民主党自身が政権のブレーキとなる、などといったリスクが挙げられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
-
トランプ関税のアジア新興国への影響と耐性は?
製品によって異なる影響。対外的な耐性は十分もインドネシアに注意
2025年04月16日
-
トランプ2.0、資源面でアジアに恩恵も
米国産LNGがエネルギー移行を促進・重要鉱物の代替供給地になるか
2025年03月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日