サマリー
◆マーケットは国債増発による「景気刺激策」を期待していたが、実際に発表されたのは、地方政府融資平台(国有企業)から地方政府への一部債務の付け替えであった。3年にわたる不動産不況などの影響で経営難に陥る地方政府融資平台が増加し、その対応が喫緊の課題となっていたのであろう。中国は2024年から2028年にかけて、地方政府融資平台などの債務の一部である10兆元(約210兆円。2023年のGDP比では8.0%)を地方政府債務に置き換える。これは本来なら地方政府債務とすべきものを地方政府融資平台が肩代わりしたものであり、「隠れ債務」と呼ばれる。置き換えによって債務の低金利化・返済期間の長期化が図られ、地方政府融資平台の経営破綻リスクや銀行の貸し倒れリスクは低減することになる。一方でモラルハザードの問題は温存されることになろう。
◆藍仏安・財政部長(大臣)は2024年11月8日に行われた記者会見で、(1)不動産市場の健全な発展をサポートする租税政策を近々発表する、(2)特別国債の発行により、国有大手行への資本注入を行い、資本を増強する、(3)景気テコ入れのためのさらなる財政政策を計画している、などと発言した。今回の10兆元の地方政府融資平台債務の地方政府債務への置き換えとは「別枠」で、財政による景気テコ入れ策が実施されると確認されたのは朗報だが、10月12日の記者会見でも同様のコメントをしており、新味はなかった。財政による景気テコ入れは後手に回っている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
学生の「103万円の壁」撤廃による就業調整解消は実現可能で経済効果も大きい
学生61万人の就業調整解消で個人消費は最大0.3兆円増の可能性
2024年11月11日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算
基礎控除を75万円引上げると約7.3兆円の減税
2024年11月05日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第2版)
「基礎控除引上げ+給与所得控除上限引下げ案」を検証
2024年11月08日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
トランプ2.0で激変する米国ESG投資政策
年金制度におけるESG投資の禁止、ESG関連開示制度の撤廃など
2024年11月07日
学生の「103万円の壁」撤廃による就業調整解消は実現可能で経済効果も大きい
学生61万人の就業調整解消で個人消費は最大0.3兆円増の可能性
2024年11月11日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算
基礎控除を75万円引上げると約7.3兆円の減税
2024年11月05日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第2版)
「基礎控除引上げ+給与所得控除上限引下げ案」を検証
2024年11月08日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
トランプ2.0で激変する米国ESG投資政策
年金制度におけるESG投資の禁止、ESG関連開示制度の撤廃など
2024年11月07日