サマリー
◆2024年7月15日~18日に中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が開催される。これが注目されるのは、今後5年間(もしくはさらに長期)の政策の方針が示されるためである。3中全会で審議・採決されるのは「改革を一段と全面的に深化させ、中国式近代化を推進することに関する党中央の決定」である。改革=経済改革と捉えがちであるが、習近平政権では、社会主義制度の改善やガバナンスの強化に改革の重点が置かれている。「経済改革」と「統制強化」という二律背反的なものが併記されることで、方向性が定まらないとの印象が強まるのであろう。
◆「経済改革」で大和総研が注目するのは、マクロ経済運営、イノベーション重視、税制改革、そして金融リスクへの対応の4点である。例えば、マクロ経済では「全国統一大市場」に注目している。「全国統一大市場」では、全国で統一された市場制度・規則の構築、地方政府による保護主義・市場分断の打破、商品・要素・資源の流動性向上などが行われる。「小而全」とは、小さな行政区であっても全ての産業に必要な設備・技術・人員・資材などが揃っていることを表す言葉であり、低効率の過剰投資が行われる主因のひとつとなっている。「全国統一大市場」が順調に構築されれば、こうした過剰生産能力が削減される誘因となる。3中全会がそこまで踏み込むのかにも注目したい。
◆一方で、習近平政権の2期目後半以降は、一強体制の弊害が色濃くなってきていることは指摘しなければなるまい。抜本的な改革は後回しとなり、対症療法的な政策が多くなっているのである。もちろん、こうした懸念が杞憂に終わり、中国をプラスに再評価できるような改革案が示されることを期待したいが、その可能性は低そうだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日