サマリー
◆2024年3月5日に、日本の国会に相当する第14期全国人民代表大会(全人代)第2回会議が開幕した。2024年の政府成長率目標は2023年と同じ前年比5%(以下、断りのない限り変化率は前年比)前後となった。同じ5%前後でも達成の困難度は異なる。2023年は、前年の2022年が厳格な移動制限が実施された「ゼロコロナ」政策下で3.0%成長にとどまった反動増が期待できた(実績は5.2%)一方で、これが一巡する2024年は、達成のハードルは上がっている。
◆2024年から新たに発行される超長期特別国債は、強国づくりと民族復興にかかわる一部重要プロジェクトの資金不足問題の解決を目的とする。国家プロジェクトや食糧・エネルギーの安全保障などに充当される可能性が高い。超長期特別国債は今後数年にわたり発行が予定され、2024年は1兆元(GDP比0.8%)の発行が計画されている。これも景気を下支えしよう。
◆政府活動報告は外資系企業を重視する姿勢を改めて表明した。国際収支統計によると、2023年の中国へのネットの対内直接投資(直接投資の流入から撤退などの流出を差し引いたもの)は81.7%減の330億ドルと、ピークの2021年の10分の1以下となった。①米国による追加関税や経済制裁などを契機とした、中国とのデカップリング・デリスキングの動き、②中国の経済成長力の低下、③改正反スパイ法の施行など安全保障を理由とした規制強化、などが、投資先としての中国の魅力を大きく低下させている。外資系企業を重視するというだけでは不十分であり、少なくとも企業が安心して経営を続けられるだけの投資環境を再度構築する必要があろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日