アフター/ウィズコロナの中国経済とデジタル専制

~政治利用も可能な「健康コード」~『大和総研調査季報』 2020年秋季号(Vol.40)掲載

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2020年10月21日

サマリー

中国は新型コロナウイルス感染症の初期段階の抑え込みに失敗したが、2020 年1 月下旬以降、ヒトの移動とヒトとの接触を厳格に制限する措置を講じ、感染拡大をほぼ収束させた。3月以降は経済活動が正常化に向かい、実質GDP成長率は2020 年1月~3月の前年同期比▲ 6.8%から、4月~6月には同3.2%へと一気に回復した。中国の景気は今後も投資主導で回復し、2020 年は前年比2.1%程度、2021 年は同7.1%程度の実質成長が可能であろう。

中国が新型コロナウイルス感染症の収束にほぼ成功し、局所的なクラスターが発生しても効果的につぶすことができているのは、人工知能(AI)やビッグデータを活用した「健康コード」によるところが大きい。健康コードによって政府はその人物に属するほとんどの情報を収集することが可能で、しかも、健康コードは既にほぼ全ての国民が使用している。中国共産党・政府が、ここに新たな統治のツールを見出してもおかしくはない。個人のプライバシーを丸裸にして、徹底的な監視体制を築くことで一党独裁の永続化を狙う。こうした締め付けが経済・社会にどのような影響を与えるのか、注視する必要がある。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

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