サマリー
10月18日に開幕した中国共産党第19回全国代表大会(党大会)では、初日に習近平総書記が「小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的完成の決戦に勝利し、新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取ろう」と題する政治報告を行った。
この中で習近平総書記は「長期にわたる努力を経て、中国の特色ある社会主義は新時代に入った」と宣言した。新時代とは、2020年(中国共産党創立100周年は2021年)までに小康社会の全面的完成を実現した上で、21世紀半ば(新中国成立100周年は2049年)までの30年間を2段階に分けて「社会主義現代化強国」を実現する時代とされた。
第1段階は2020年から2035年までであり、社会主義現代化を基本的に実現する。具体的には、以下の6点が基本的に実現しているという。
①経済力・科学技術力が大幅に向上し、イノベーション型国家の上位に上り詰めている、
②人民の平等な参加・発展の権利が十分に保障され、法治国家・政府・社会が基本的に構築され、様々な制度が一層充実し、国家統治システム・能力の現代化が基本的に実現している、
③社会の文明度が新たなレベルまで高まり、国の文化的ソフトパワーが著しく補強され、中華文化に、より広く深い影響力が備わっている、
④人民の生活がより豊かになり、中所得層の割合が顕著に高まり、都市・農村間、地域間の発展格差や住民の生活水準格差が著しく縮小し、基本公共サービスの均等化が基本的に実現し、全人民の共同富裕が堅実なスタートを切っている、
⑤現代的社会統治の枠組みが基本的にできあがり、社会に活気が満ち溢れ調和と秩序も備わっている、
⑥生態(エコ)環境が根本的に改善し、「美しい中国」の目標が基本的に達成されている。
第2段階は2035年から21世紀半ばまでであり、中国を富強・民主・文明・調和の美しい社会主義現代化強国に築き上げるとしている。その将来像として、「(1)物質文明・政治文明・精神文明・社会文明・生態文明が全面的に向上し、(2)国家統治システム・能力の現代化を実現し、(3)トップレベルの総合国力と国際的影響力を有する国となり、(4)全人民の共同富裕が基本的に実現し、人民がより幸せで安心な生活を送り、(5)中華民族はますます溌剌として世界の諸民族の中にそびえ立っている」ことを掲げた。
この長期構想は概念的なものであり、具体性に欠けるが、今後、30年計画のような長期ビジョン計画を策定する布石なのかもしれない。これが政策としてある程度具体化されると、経済・社会の質的向上に向けた動きが加速する可能性があろう。
(※1)本稿は、大和総研レポート 『中国:30年間の「強国」長期構想を発表』(2017年10月19日)を一部修正のうえ、転載したもの。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日